小さな楽園〜最終章

馬房には牧場長が戻って来られていた。 「木下さんですか?」 「はい、先ほどはお電話で失礼致しました、ありがとうございました」 「いえいえ、遠くから来て下さってありがとうございます、 それにしても良く場所が分かりましたね、本当に大したもんだ(笑)」 一通りの挨拶と、その後も会話を交わした後、 私が「メガはあれですよね?」と聞くと、 牧場長が「そうそう、あの子だよ、幹夫が電話かけてきてな・・・」、 やはり報道通りだった。 「幹夫が何とかって言うから、「いいぞ」って言ったんだ、 幹夫は昨日も電話かけてきたよ」と、 その後、いろいろと心に残る話をしてくれた。 「昨日も電話でな、幹夫が「どうしてます?種付けしました?」って 聞いて来たよ、気になるんだろ、 「ああ、試運転は終わったよ」と言っといた(笑)、 だって、種付けどころか、何もやり方知らないんだから、 一から教えないとな(笑)」と、お忙しいのに、 笑顔でいろいろと話を聞かせてくれた。 「10頭くらいは種付け予定してるよ、 10頭もすれば大体の傾向が出るやろうし」、 「メガはニホンピロウイナーの下だけど、親はスピード一辺倒だったけど、 メガは距離に融通が利くから楽しみにしてる、根性もあるしな」と、 私には期待されている様に感じられた。 他にも、この牧場の仔馬の話などもいろいろして頂いたが、 何より私が嬉しかったのは、忙しいにも関わらず、 ずっと笑顔で話してくれた事、 それが何よりも嬉しかったし、 「メガはいい所に来たな」という思いでずっと話を聞いていた。 「こんな小さなとこやからな、今、向こうに建て替えしてるんだ、牧場を」 と牧場長、「全部手作りになると思うけど、せっかくやからな、 今までは滅多に無かったけど、 これからはファンの人も来られるかもしれんし、 せめてお茶飲み場くらいはないとな(笑)」と、 嬉しそうに語ってくれた。 そうこうして、あまりお仕事の邪魔をしてもと思い、 「もう一回だけ見せてもらっていいですか?」と私、 「ああ、いいよ」と牧場長。 馬房の中に入ると、メガスターダムは今度はお尻をこちらに向けて、 後ろ向きで下を向いていた。 「おい、また来たぞ」と言うと、クルリと振り向いて、 またまたこちらに寄って来た、 「本当に人なつっこい奴だな(笑)」と言いながら、 また触ったりしていたが、 メガスターダムはすぐに下を向いた、「あれ?」と思ってよく見てみると、 既に目が半分以上閉じている、 どうも後を向いて眠そうにしている所に声をかけてしまったらしい、 「しまった・・・可哀想な事をした」と思い、 「じゃあ帰るから、また来るな」と声をかけたが、 メガはひたすら眠そうにしていた。 牧場長さんに帰りの挨拶とお礼を言うと、 「こちらこそ、ありがとうございました、 是非、また来てあげて下さい」と、本当に最後まで親切に接して頂いた、 そして、こっそりとお礼を置いて帰って来た。 帰りの車中、携帯に電話がかかってきた、 誰かと思って出てみると牧場長から、 その電話の最後、牧場長がこう言ってくれた「牧場も場所が替わるし、 これからは私からも連絡させてもらいますね、それとね、 お馬さんも喜んでますよ」と、 その最後の一言が何より嬉しかった。 こうして1日が終わった。 本当に小さな牧場だった、社台スタリオンの1頭分も無い敷地、 建物は全てプレハブ、地面は芝ではなく土であり泥、 馬と犬とニワトリが一緒に生活しているような所。 5月1日、京都競馬場には8万人の観客を集めて天皇賞が行われた、 その天皇賞という大舞台に立つはずだった1頭の馬が、同じ時間には、 熊本の外れにある、本当に小さな牧場にいた。 勝負の世界、勝者は北海道で悠々自適な生活、敗者は田舎の小さな牧場、 これは仕方の無い事、競走馬は経済動物であるという面は否定出来ない、 経済動物である以上、用が無くなれば処分される。 しかし、多くの馬が廃馬、乗馬(多くは廃馬を意味する)となる中、 メガスターダムという馬は、一人の騎手によって命が救われ、 そして、小さな所だが、厚い愛情で包まれて第二の人生をスタートさせた。 帰りの車の中で思った、奴にとっては、これも楽園かもしれないと。 牧場長、奥様、お世話になった方々に心より感謝申し上げます。 (終わり) メガ6メガ7 (画像の無断転載を禁じます) 人気blogランキング、 ご協力お願いします 競馬屋


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熊本の牧場のメガスターダムとでんすけ

でんすけ

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1999年の開設以来、今年で20年目を迎える事が出来ました、 今後も更に高みを目指して努力して参ります。 今後とも宜しくお願い申し上げます。

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書いた記事数:2149 最後に更新した日:2020/10/22

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